第1話 飛行機の中で
初めての海外出張でした。中部新国際空港建設のプロジェクトチームのメンバーである私は深夜便も飛ぶと云う、シンガポールのチャンギー国際空港への環境視察をすることになりました。とりあえず私が団長、愛知県企画部航空対策局職員、関係市の職員、関係団体の人から成る混成視察団です。市からは部長さん、環境係長さんの2名、関係団体は経済界から3名、そして私の職場である航空対策局から3名です。部長さんが突出して年齢が高いので団長である私が面倒をみることとなりました。
朝9時、名古屋空港集合、シンガポール・エアラインでのフライトは午前10時です。若い連中は前の方の席、部長さんと私は2人で後方の席でした。私たちの席の後方には「郵便友の会」のオバチャン連中が40名ほどです。部長さんが窓側、私が真ん中、通路側は旅慣れたジーパンのどこかの見知らぬ、お兄ちゃん(やや、ブスーッ、としている)です。
いよいよ離陸、勢いよく出発し、セントレア建設予定地上空をかすめて紀伊半島沖に向かいます。
私:「部長さん、下に見えるのが空港建設予定地です。」
部長さん:「そうだね、よく見えるよ。ここに海上空港を作ると景色もぐっと変わるでしょうなあ。」
私:「部長さん、私、海外は初めてです。よろしくお願いします。」
部長さん:「僕は、台湾、韓国、グアムなど行きました。よろしく。」(実は、任せなさいと言わんばかりの態度に見えました)
(そこへ、中国系超美人の添乗員が通りかかります。部長さんは、すかさず・・・)
部長さん:「プリーズ、ビアー?」
超美人添乗員:「オーケイ、ビアー」
私:「部長さんすごいですね、ビアーとはビールほしいということですか?」
部長さん:「坂部さんもビアーをいただきなさいよ。」
というわけで、私と部長さんは缶ビールに舌鼓をうっていました。
飛行機は、九州から沖縄沖を順調に飛行しています。飛行機のエンジンの振動とうなり音が快く感じています。窓から見る眺めというと、海が青く、雲も湧き、まさに旅は前途洋々、順風漫歩の様相を呈していました。
フライトは沖縄沖から台湾沖へと進んでいます。お待ちかねの機内食の時間がきました。後方の席から順に食事のメニュー表が配られました。英語なのかフランス語なのかわかりません。
私:「部長さん、これ何と書いてありますかね。」
部長さん:「メニューは2つだね。どちらか選ぶんだ。」
(後ろの方で、添乗員が、「えい、びい?」と尋ねています。郵便友の会のオバチャン連中は、「うんうん。」と首を縦にうなづく人、「ハイ。」という人、黙ってニコッとするだけの人ばかりです。中国系超美人添乗員は適当に機内食を配っています。)
私:「部長さん、先ほどから超美人添乗員が、A,、B と言ってますね。」
部長さん:「そうだね、メニューは2つの中から選ぶんだ。」
私:「そうなんだ。わかった、A定食、B定食の中から選ぶんだ。ね、部長さん。」
部長さん:「……。」(かなり考え込んでいた末)「そうだよ。わたしはB定食にするよ。」
(私たちは郵便友の会のオバチャンとは違うんだ。一緒にしてもらっては困るという気持ちで・・・)
私:「じゃあ、私はA定食。決まりです。」
食堂の定食
写真―1 なぜかA定食は売り切れていました(愛知県庁食堂にて)。
いよいよ、超美人添乗員が私たちの所へやってきました。
超美人添乗員:「えい、びい?」(と尋ねてくるや、すかさず私は答えました)
私:「A プリーズ」
超美人添乗員:「??????」
(私の発音がよくないのかなあ・・。再び)
私:「A ランチ・プリーズ」
すると、通路側に座っている、やや、ブスーッ、としていた、旅慣れたジーパンのお兄ちゃんが、遠慮がちに言うのです。「エビフライでいいですかと言っているのではないですか。」
部長さん:(いきなり)「オーケイ、エビ、プリーズ」
私:(小さな声で)「えい、びい、プリーズ」
(反省)
その1 初めての海外旅行でちょっとはしゃぎすぎたのではないか。私は、「えい、びい、プリーズ」以後、おとなしく、ややウツムキ加減でシンガポールまで、ジーパンのお兄ちゃんと隣同士で、その後4時間のフライト。身がチヂム思いでした。前途多難、天気晴朗なれど波高し、とはこのことだとつくづく思いました。
その2 考えてみれば、社員食堂でもあるまいに、A定食、B定食はないよね。
その3 それにしても部長さん、いきなり「オーケイ、エビ、プリーズ」はないよね。この裏切り者め・・・。
エビフライ定食
写真―2 憎っくきエビフライ定食(新大阪駅で買った駅弁)