第9話 トンチンカン先生の『お仕事奮戦記』
はじめに
坂部環境技術事務所の仕事はいわゆる『コンサルタント業』です。環境に関するコンサルを請け負うのが本来の筋ですが、コンサルタント業は、アドバイス業、どんな悩み事でも受けたまわります。なんでもござれ、即刻応需、つまり、『何でも屋』なのです。依頼される仕事は、まさに千差万別、何でも来い、皆出て来い・来い・来い、です。
坂部環境技術事務所は、一応、環境に関する各種届け出の支援、産業廃棄物処理業者のコンプライアンス支援、大学での環境に関する講義などが主な業務です。そして、皆さまのおかげで、『開設5周年』を過ぎました。そこで、今まで請け負いました非常に難しかった例をご紹介して、坂部環境技術事務所の『実力発揮』と『冷や汗かいた』の一部を紹介します。以下ご覧あれ。
<参考> 坂部事務所の主な業務
番号 業 務 内 容
環境関連法規の届出支援
環境コンサルタント
大学教育研究
ビオトープ企画、設計等
審議会委員、審査員等
その他環境に関連した事項
第1話 騒音の原因は誰だ!(実力発揮編)
ある日、A社社長さんから電話がありました。
A社社長:
「わが社の工場騒音が基準を超えているので、防音壁を作りたいのですが・・・、どのようなものを作ればよいのか、建設費はどれほどか相談に乗ってほしいのですが・・・。」
坂部:
「工場の音の発生源や工場全体のレイアウトを頭に入れたいので、一度訪問します。」
A社社長:
「お願いします。わが社の担当者にご指導お願いします。」
という訳でして、A社B工場を訪問しました。工場の周りを歩いてみると、周りは田園地帯、近くにベッド数50床ほどの病院、人が実際生活している住居は工場からおおよそ200メートル離れていました。そして、西北側には200メートルほど離れ、東側には100メートルほど離れて大きな幹線道路が走っていました。それは高架構造でして、4車線の高規格道路です。この自動車音もかなりなものでした。そして、幹線道路が見えなくなる場所へ移動すると騒音は少なくなり、再びその道路の見渡せる場所に来ると騒音は大きくなるのです。「ははぁ~。これが原因だな。」と直感しました。そして、簡易な騒音測定を行い、自動車音が工場の外壁に反射して、その音が騒音の測定値を高くしていることを確認しました。
後日、社長さんにこのことを説明するため訪問しました。すると、社長さんは、いきなり言うのです。
A社社長:
「ご苦労様でした。それで、どれぐらいの大きさの防音壁が必要でしょうか。5,000万円ほど用意しなければいけないでしょうか。大きな防音壁を作るとなると製品の積み込み作業のし易さにも影響しますしなぁ。結果はどうでしたか?」
坂部:
「しっかり測定しなければなりませんが、多分、防音壁の設置は必要ありません。5,000万円は用意しなくても済みそうです。」
A社社長:
「何ですって。実は、親会社から国で決められている規制基準を守らないと仕事を回さないといっているし、市役所環境課からは改善勧告をいただいているし、ISO14001の審査では毎回指摘されているという状況なんですよ。そんなことできるんですか? できるとなれば、こんな有難い話はないです。」
坂部:
「騒音の測定に影響しているものは、多分、道路の自動車音が工場の外壁に反射して、その音を騒音計が拾っていると思います。したがって、音の発生源は、ほぼ間違いなく道路から来ているものがほとんどだと思います。つまり、測定目的でない音を拾っているのです。ちなみに、このような自動車音など関係ない音を暗騒音(あんそうおん)と言います。」
A社社長:
「なんだか、意味が分かりませんが、どうすればよいのでしょう。」
坂部:
「これは、工場が一切の設備を止める長期休暇の期間中に測定することが必要です。その時の音のレベルが工場の操業時と同じ音のレベルならば、この音は工場以外から飛んできている暗騒音と考えられます。」
A社社長:
「何だかわかりませんが、とにかく、わかりました。坂部環境技術事務所にお任せします。」
坂部:
「それでは、お盆の長期休暇の期間中に測定しましょう。その結果をもって今後の方針を考えることにしましょう。」
A社社長:
「よろしくお願いします。あぁ~、とりあえず、助かった。」
という訳で、夏の炎天下で騒音測定です。測定時間は以下の通りです。
番号 測定開始時間 測定時のコメント
午前6時早朝の野鳥の声で頻繁に測定の中断
午後2時もっとも暑い時間帯で測定者に熱中症の兆候あり。セミの鳴き声で測定の中断
午後7時ヤブ蚊の襲来で悪戦苦闘
午後10時眠気との戦い
注. 騒音測定は工場周囲4か所と幹線道路に近い2か所、合計6か所
夏の炎天下で、鳥は鳴く、セミは鳴く、ヤブ蚊に刺される、のど渇く、熱中症の兆候でフラフラになりながらの測定です。測定時間は一回当たり約1時間です。騒音測定のほか、風向・風速、気温、湿度など音に影響を与える項目の測定、そして、道路に面した測定場所は、自動車走行量、大型車走行量(のちに大型車混入率を計算します)の測定などかなりレベルの高い測定をしました。そして、結果は予想通りでした。満足。満足。
下の表を見てください。工場からの騒音よりも高い暗騒音の数値が出ているケースもありました。つまり、高架になっている道路からの自動車音は工場の壁に当たり、反射して、あたかも工場から出ている騒音のように聞こえるのです。
表―6 A株式会社B工場の敷地境界における通常時騒音と暗騒音の測定結果
表―6 A株式会社B工場の敷地境界における通常時騒音と暗騒音の測定結果
<結 果>
これらのデータを持って、市役所環境課を訪問し、その原因は主に自動車騒音であり、工場の長期操業停止時においても、同じ騒音レベルであったと説明しました。市役所は了解し、坂部環境技術事務所が作成した『騒音に関する報告書』を受け取っていただきました。そしてその結果をもって、親会社へ報告しました。ISO14001の定期検査の時にも説明し、問題ないという結論をいただきました。
最後に、市との公害防止協定についても、協定値は変更しないものの、市は今後、一切、騒音測定結果については意見を言わないこととなりました。
<今回のポイント>
暑い日に測定することは大変でした。セミの鳴き声、野鳥の鳴き声、そしてヤブ蚊に悩まされました。今後は秋の涼しい時期を選ぶべきとして、計画しています。
測定した数値がすべて工場から発生する騒音と思い込んではいけないのです。測定しようと思っている音以外の雑音は『暗騒音(あんそうおん)』といい、測定データから削除しても良いのです。たとえば、今回問題になった自動車音の反射音、野鳥・セミの鳴き声、木の葉のサラサラ音、犬の鳴き声、高圧電線(鉄塔)の風切音など、暗騒音は私たちの身の回りにいっぱいあるのです。
音はよく反射するものです。例えば、空高く飛んでいる飛行機の音がよく雲に反射して低いゴロゴロとした音として聞こえます。ビルの谷間にいる場合、音の来る方向ばかり見ていると飛行機の飛んでいる姿は見つかりません。ビルに反射していると考えて音の方向を見極めると必ず飛行機が見つかるのです。
音に対して十分な知識を持つことは大切であると思いました。音は一般に苦手な物理の領域ですので、最初から敬遠してしまうのです。ましてや、中小企業の方々には難解な数式で音の伝わり方、防音の方法を検討するのでなおさらです。坂部環境技術事務所に相談することが必要です。
第2話 元公務員でしょう。(冷や汗かいた編)
ある日、C社の社長さんから電話がありました。
C社社長:
「ちょっと、お願いがあるのですが・・・。」
坂部;
「何でしょうか、できる事なら何でもいたします。」
C社社長:
「私は、相撲の○○部屋の中部地区後援会長をしているんだが、後援会規約が無いので、素晴らしい規約を作ってもらえないかねぇ。」
坂部:
「ええっ、後援会規約ですか?」
C社社長:
「いいじゃありませんか、坂部さんは元公務員でしょう。この辺りは得意な分野じゃありませんか?」
(私とこの事務所は、環境技術事務所なんだけどなぁ~、と思いつつも、ここで断ったら、以後仕事がもらえない、と思い、勢いで『わかりました。』と言っちゃいました。)
さてさて、困ったぞ。『素晴らしい規約』、OKはしたものの、どのような規約にするのか見当が付きませんでした。兎にも角にも、後援会というものに関係したことがありません。
わかりました、といった手前、後には引けません。とにかく、インターネットで「後援会 規約」と打ち、検索しました。芸能人の後援会(ファンクラブ)、流行歌手の後援会、国会議員の後援会、伝統芸能の後援会など、後援会と名の付くものを片っ端から調べました。そして、お相撲の後援会規約らしくて、ハンドリングの良いものを選びました。それは、即ち、『ど演歌流行歌手の後援会規約』でした。
その特徴は下表の通りです。
後援会の総会は開催しない。
後援会の決議は理事会が行い、その結果を後援会会員に、はがきやメールで伝える。伝える回数は年に1回程度のケースが多い。
流行歌手がご当地に巡回公演で来るときは、この地域の後援会会員に知らせるとともに、チケットの斡旋をする。
ご当地に巡回公演で来るときは、公演の最終日に、後援会主催の立食パーティーを開催する。パーティーでは、子供たちにも参加してもらえるようにゲームやくじ引きも行う。
後援会費は、年額2000円から1万円の低料金で、『会員の増加が第一』を目指している。
という訳で、上記5つの特徴を織り交ぜて、お相撲の○○部屋の後援会規約を作成しました。なんだか変な気持ちですけど、この規約はどうも、今でも生きているようです。
平成25年秋場所番付表
後援会からいただいた平成25年秋場所番付表の一部分
<今回のポイント>
コンサルタントの経営理念は、どんな依頼でも断ってはいけない、というものですが、やっぱり断るところは断る必要があるのかなぁ、と少しだけ思いました。相当な悪戦苦闘の結果、自信のない成果物を提出してしまいました。しかし、当たらずとも遠からずというのでしょうか、第三者から見るとかなりの出来栄えだったようです。
とにかく、大変勉強になりました。特に、総会というものはないというところに、『う~ん。』とウナズイテしまいました。これから、このような依頼があっても、自信を持って対応できるぞ~ぅ、と確信しました。
そうですよねぇ、会員が北海道から沖縄まで広く広がっている状態で総会など開けませんよね。
こんな訳でして、坂部環境技術事務所は、いざという時に頼りになる事務所に一歩近づいたかな、という気持ちになりました。
第3話 闇夜の音(実力発揮編)
今度は、D社社長からの電話です。
D社長;
「当社の工場騒音ですが、夜間の騒音規制基準をクリアーできないのです。何が問題なのか調査し、対策を考えてもらえないかなぁ~。」
坂部:
「はい、わかりました。貴社のE工場で夜間でも稼働している換気扇、ポンプ類の設備の位置を調べ、音の発生源や工場全体のレイアウトを頭に入れたいので、一度訪問します。」
D社社長:
「お願いします。わが社の担当者にご指導お願いします。」
さっそく、ある日の夜10時過ぎにE工場へ訪問しました。10時を過ぎるとほぼ全体の製造ラインは止まるようです。しかし、工場の換気扇、排水処理施設、受電施設から、「ブーー」という周波数の低い音が聞こえます。しかし、この低音はさほどのものではありません。工場の周囲を歩いてみました。すると、西北の方角で、空が明るいことに気が付きました。かなりまとまった市街地が2キロメートル向こうにあるのです。そして、遠くで電車の走行音が聞こえます。そのほかの気になる点はありませんでした。周りは田園地帯です。
翌日、坂部環境技術事務所のスタッフと音の発生源について検討しました。
(会話は三河弁そのままで忠実に再現しました。)
坂部:
「換気扇、排水処理なんかの音はそんなに気になるもんじゃない、と思ったよ。排水処理設備も工事の敷地から、だいぶ離れとるし、測定結果に影響を与えるもんじゃないと判断するよ。」
Aスタッフ:
「音は低い音ほど遠くまで伝わるじゃん。やっぱ、遠くから飛んでくるじゃないかねぇ、ほい。」
Bスタッフ:
「そんなら、近くに、幹線道路はなかったかねぇ。」
坂部:
「あったよ。だけどねぇ、夜間の自動車走行量は少ない状態だったじゃん。でもよぅ、2キロメートルほど遠方にかなりまとまった市街地があったんだけどねぇ。こいつが気になるんだよ。」
Aスタッフ:
「だったら、そこからの低周波音じゃないかねぇ。」
坂部:
「測定の日は、音に関して、そんなに気にならんかったよ。」
Bスタッフ:
「風もなく、湿度が高く、気温が下がっている場合(三河弁では『ばやい』と発言します)は、遠くからの電車音の音がよく聞こえるという現象を知っとるよ。特に低音部の音がよく伝わるという話じゃんか。」
Aスタッフ;
「大気の状態が逆転層になっとる場合は音がよく聞こえるじゃん。」
坂部;
「たしか、逆転層の状態じゃぁ、遠くの大型船のエンジン音が山の手まで聞こえるという話じゃん。そうだ、これが原因の一つと考えればいいじゃん。話は簡単だなあ、ほい。」
Bスタッフ:
「一度、騒音測定をやろまい。その時は必ず、騒音測定だけでなく、温度、湿度、風向、風力も同時に測定をやろまい。また、当日の天気図も入手しようや。」
<解説>
排水処理なんかの排水処理などの
気になるもんじゃないと思ったよ。気になるものではないと思いましたよ。
だいぶ離れとるしかなり離れているようですが
与えるもんじゃない与えるものではない
伝わるじゃん伝わるでしょう(同意を期待する言葉)
やっぱやはり
飛んでくるじゃないかねぇ、ほい。飛んでくるのではないでしょうか(「ほい」は特別な意味はなく、発声時のリズム感的役割とでも言いますか・・。)
そんならそれでしたら
なかったかねぇ有りませんでしたかねぇ
でもよぅでもね
だったらそうでしたら(そうであったら)
気にならんかったよ。気になりませんでしたよ
知っとるよ知ってますよ
話じゃんか話ではないですか
状態じゃぁ状態では
測定をやろまい測定を実施しましょう(勧誘の意がある)
入手しようや入手しましょう(「やろまい」ほど強い勧誘の意味はない、むしろ、同意の意味合いがある)
という訳で、夜間10時の騒音測定を実施しました。騒音測定は同時に気温、湿度。風向、風速、その他気の付いた事項をメモするなどスタッフ全員(3人)とD社の環境担当職員の合計4人で対応したのです。
やはり、規制基準の50デシベルを超えていました。その場所は市街地が望める地点であり、市街地の後方5~7キロメートルは海になっています。そして当日の天気図をインターネットで調べると、この地域全体がほとんど風もなく、低い温度になっています。逆転層が形成されやすい条件が整っていました。
下の図をご覧ください。音は逆転層の境界を反射している状態です。いわゆる『音がこもる』という状態です。逆転層内にある音の発生源(市街地)と測定点は、まさしく音のこもった中にありました。
したがって、市街地の低周波音が測定データを高くしていたのです。そして後日、D社社長さんにこのことを説明し、基準値を超える原因はD社の工場ではありませんと結論しました。その結果をもって市の環境保全課を訪ね、市との公害防止協定の見直しを約束しました。
逆転層形成により騒音レベルが高まる仕組み
図 逆転層形成により騒音レベルが高まる仕組み
<今回のポイント>
騒音測定は、音の測定だけでなく、周囲の状況、当日の気象状況、場合によっては近くの幹線道路の自動車走行量、大型車混入率などの情報もしっかり取得しておく必要があります。
騒音をはじめ水質、悪臭、土壌など環境に関する測定は、測定する前に測定値に影響を与える要因をピックアップし、十分な検討、関係者からのアドバイスを得て実施することが望まれます。
測定には関係する情報をできるだけ取得すると、測定データの評価がより確実なものとなります。測定している時の状況、例えば、電車音が聞こえた、ヘリコプターが飛んでいた、生活道路に軽トラックが走行した、風が吹きトタンが揺れる音、木の葉がサラサラ鳴るなどできるだけ記録することが必要です。
第4話 あのぅ、坂部せんせいぃ~。(冷や汗かいた編)
私は、一応、大学の客員教授や非常勤講師をやっています。講義の内容は環境に関するものです。そして、講義では学生の目線で優しく、質問しやすい雰囲気づくり、自分の意見を主張できる雰囲気づくりを目指しています。
大学は、文学部教育学科、工学部土木学科、工学部都市環境デザイン学科での教鞭です。それぞれ学科は違うのですが、『環境』という切口では一緒です。学生は、もちろん、文学部は女子学生がほとんど、工学部はほとんど男子学生です。
女子学生も、男子学生も、皆さん単位を取得するため、しかも、A判定での成績を狙って、あの手、この手と様々な方法で、要領よく勉学に勤(いそ)しんでいるのです。以下、3例ですが、学生のアクションと坂部先生の対応を紹介します。
講義の風景
講義の風景 中国大連 東北財経大学にて
<その1> 先生、お聞きします。
E大学では、「5回以上講義に欠席をすると、単位を与えてはならない。」という決まりがあります。そのため、授業の時間がモッタイナイのですが、毎回、授業のはじまる前の5分間前後の時間を使って出席を取っています。でも、時々、授業をサボる、授業を休む学生、そして遅刻する学生もいます。
ある時、授業が終わると、一人の学生がやってきました。何か授業でわからないことを聞きに来るのかなぁ。まじめな学生だ、どんなことでも答えてあげなければいけない、と自分に言い聞かせ、「何か分からないことでもあるのかねぇ。何でも聞いて。」と学生が質問しやすい雰囲気づくりに努めました。すると学生は言うのです。
学生:
「先生、僕、あと何回、授業を休めますか? 」
坂部先生は一瞬何の事かわからなく、頭が真っ白。授業を休むって、何だろう?そして、理解しました。『5回以上休むと単位を与えない。』と言う決まりがあるので、単位を取得できるにはあと何回まで休むことができるのだろうか、と言っているのです。
坂部先生:まじめに閻魔帳を見て、「あと1回だ。」
<その2> 先生、お願いぃ~。
F大学では、「A判定の評価を受けた授業がいくつ以上ないと、教育実習をさせてもらえない。」と言う決まりがあります。つまり、教育学科を卒業しても教育実習の単位を取得していないと教員免許と言う国家資格の受験資格がなくなるという事です。
ある時、夕食後の貴重な時間に、少しお酒が入った状態ではあるものの(少し顔が赤い程度で、判断力は決して衰えていない状態です)、手際よく、かつ、じっくりと学生から集めた100人分の小論文を添削していると、その中に次のような書き込みを見たのです。
「先生、お願いぃ~。教育実習に参加できるためには、A判定がどうしても1つ足りないのです。A判定くださ~ぃ。♡!!」
そこで先生は考えました。教員になるチャンスを私が潰してしまうのではないか、いやいや、そもそも、ギリギリの成績で教員免許を取得して、はたしてどのような先生になるのだろうか。しかし、成績と先生の資質との間には相関関係がないと考える方が正しい。と言って、ああでもない、こうでもないと、いろいろなことを15分程度考えていました。
そして、結果は、『この学生は、自分を主張する勇気がある。』という事で、座布団を1枚加え、A判定としました。繰り返し説明しますが、決してお酒が入っているせいではありません。あしからず。
<その3> 先生、頼みます。
G大学では、比較的作文力の弱い理系の学生ですので、特に期末試験の時は、論文の原稿用紙に余白は残さない、与えられた1800字の原稿用紙の95%は書き込むことなど、論文の書き方を教えています。私は試験が始まる前に「余白が出来たら、自分の思い、抱負などを書き、出来るだけ書き込むことが重要だ。」と点数が上がるための手法をそれとなく教えていました。
ある時、夕食後の貴重な時間に、またまた、少しお酒が入った状態ではあるものの(同じく、少し顔が赤い程度で、判断力は決して衰えていない状態です)、手際よく、かつ、じっくりと学生の書いた答案用紙100人分を採点していると、その中に次のような書き込みを見たのです。
「先生、頼みます。1年、留年してしまいました。これ以上留年は出来ないので、必ず単位をください。C判定でもいいです。これ以上留年すると親が悲しむので、お願いします。」 まったく、この学生は他力本願的だ。でも、と、ここで再び考えました。この学生の将来を考えると、親御さんの気持ちを考えると、いやいや、大学と言う格式を考えると・・・。
そして、結果は、『この学生は、自分を主張する勇気がある。』という事で、座布団を1枚加え、C判定とし最低点での合格としました。再度、繰り返し説明しますが、決してお酒が入っているせいではありません。ふたたび、あしからず。
<反省>
1 学生の目線で優しく、質問しやすい雰囲気づくり、自分の意見を主張できる雰囲気づくりを、やや、目指しすぎたようです。先生は『威厳』を持つことも、また、大切であることがわかりました。特に『、ハート・マークでのお願いぃ~。』、には、鼻の下を長くしないことの重要性を再認識しました。