1 はじめに
トンチンカン先生はすでに60代の後半に差し掛かっています。この先、どの様な生活をしていくか、思案のしどころです。
年(とし)、どしに我が悲しみの深くして、いよよ華やぐ、命なりけり
と、かの有名な岡本かの子先生(芸術家岡本太郎さんの母)が老妓抄(ろうぎしょう)の最後の部分で申しておりました。私も、いよよ華やぎたいと奮励努力をしていますが、男はつらいよの寅さんのように、高望みが過ぎて失敗の連続です。
そこで、私の生きがいの一つである孫についてお話をします。こんなにも孫に力と愛情を注ぎこんでよいものかと思ってしまうのですが、『子育ての失敗を孫で取り戻す。』を、大目標に日夜、子育て、いや、孫育てをしているのです。今回はトンチンカン先生の孫との付き合いの失敗談、照れ隠し談、『マゴマゴ物語』を紹介します。
2 孫とお嫁さんの優しい会話
私はしばしば、孫とお嫁さんを車に乗せて水族館やさかな広場、JRの沿線で貨物列車や電車を見ます(1時間ほども)。そして、安城の堀内公園でこども汽車に乗り、滑り台を滑り、ブランコに乗り、芝生の丘を駆け登り、池で亀や鯉に餌をやります。つまり、子供には、何でも体験をさせなければなりません。環境が子供を育てるのです。
環境が子供を育てるとは、より良い環境で子供を育てることです。子供にとって非常に重要なことなのです、という意味なのです。昔、自分の子供を育てるために孟子の母は3度住まいを変わったのです(孟母三遷の教え)。これを息子のお嫁さんに教えています。子供には様々な経験をさせ、子供の質問には正直に何でも答え、そして、手を抜かないことを・・・・。まさに、環境が人を造るのであります。
【孟母三遷の教え(もうぼさんせんのおしえ)】
〔「列女伝」から。孟子の母が,はじめ墓所の近くに住んでいたところ,孟子が葬式のまねをして遊ぶので市中に引っ越した。今度は商売のまね(ちんどん屋さんのまね、と中学生の時、先生から教えられた)をするので学校のそばに引っ越した。すると礼儀作法をまねたのでそこに居を定めたという故事〕
教育には環境からの感化が大きいという教え。三遷の教え。
その夜は、家庭料理を家族全員で作りました。息子のお嫁さんは、私の家の台所でよく働きます。そして食器洗いも上手です。しかし、孫がまつわり付いて思うように台所仕事ができません。お嫁さんは孫と話をしながら、両手は洗いものをしています。私は、その日の昼に孫を堀内公園へ連れて行きましたので疲れてしまい、居間でテレビを見ながらウトウトしています。実際は、寝たふりをして聞き耳を立てているのです。お嫁さんは、実によく子供と会話している。どこでも連れて行き、なんでもこたえている。まさに『孟母三遷の教え』、よく、やっている。まずまず良い環境になっている。3歳になった孫は将来有望ではないかと私一人で満足しています。
その時です、お嫁さんと孫が台所で何か対話をしています。
孫:「これ、なあに?」
嫁:「じじぃの『入れ歯』。」と、間髪入れず、すぐ回答しました。(私は、「孟母三遷の教えが行き届いている。」 と一瞬思った。)
孫:「へぇ・・・、『入れ歯』ってなあに?」
嫁:「じじぃに聞いておいで。」と、私に答を振るのです。(この部分はいけない対応だ、問題を正面からとらえて答えていない。孟母三遷の教えではない。ちょっと嫁に苦言を奏しなければ・・・。)
そんなことより、入れ歯を台所の流しにコップに水を入れて、置いたままだった自分に気が付き、しまったと思いましたが、後の祭り。
孫:「じじぃ、『入れ歯』ってなあに?」
そこで、じじぃは説明するより、実演する方が3歳の子供には理解が速いのではと考え、台所から、私の入れ歯を持ってきて、「たか君、これはねぇ。この様に使うのだよ。」と言い、入れ歯をはめるところを、孫の顔から15センチの至近距離で演じました。
孫:「じじぃ、すご~い。」
これで、この対話は終了しました。環境が子供を育てる行為(入れ歯をはめる)をしたことにより、孫はしっかり理解したと思います。嫁は、何ごとが起こったのか瞬時に理解できない状況でした。じじぃがあまりにも想定外の行動をしたからなのでしょう。
それにしても、入れ歯の置き場所を忘れてしまうなんて『認知症直前』です。昔のことはよく覚えているが、ちょっと前のことはすっかり忘れてしまうのです。
3 『良薬は口に苦しの巻』(薬の効用は如何か)
60歳を超えると、特に65歳を超えると様々な持病と向き合うことになります。私は毎日大量の薬を飲むことになってしまいました。以下説明します。
①痛風(32歳の発病から、ずーっと毎日2錠、ザイロリックという薬を飲んでいます)②軽い高血圧(7年前から軽い高血圧症の薬2種類を1錠づつを飲んでいます。これは、私の母方の遺伝でしょうか、叔母さん、叔父さんとも脳溢血、クモ膜下出血で亡くなっています)、
③左足ひざ内側のしびれ(脊髄の下から3番目の骨が左足へ伸びる神経を圧迫している。原因は加齢ですと医者は簡単に言いました。そして、治りませんとも言いました。)
④最後に、美と健康の妙薬であるプロポリス顆粒剤を一袋、そしてビタミン剤1錠
その結果、朝は10種類の薬を飲む毎日です。毎週土曜日から息子一家が泊りにやってきます。そして、私が薬を飲む様子に関心を持った孫がやって来て、
写真―1 毎日、これだけの薬を食後に飲みます。
薬は、孫が私の口の中に入れます
孫:「じじぃ、これなあに?」
私:「薬と言って、大人になったら飲むものだよ。」
孫:「僕がやる(口の中に入れてやる)。」
というのです。仕方なしに、1錠ずつ孫に手渡しし、私が大きく口を開けて、薬を入れてもらうのです。入れた薬は、すぐさま舌の下へ隠し、次の薬を入れてもらいます。錠剤を全て口に入れ終わると、
私:「たか君、薬はどこへ行ったのでしょう。」
孫:「もう飲んだ(飲み込んだ)でしょう?」と言います。
私:「ほんとかな?」
そう言うと、私は、おもむろに、舌の下に隠した錠剤9つ全てを舌の上に戻し、大きく口を開けます。そして、孫に口の中を見せます。
私:「どーだ。」
孫:「じじぃ、すご~い。」
バカなことをやっている、「じじぃと孫」でした。それにしても、現代の薬は『良薬は口に苦し』ではなく、『良薬は孫と会話できる』でした。
3 『パンダとコアラ 珍獣の巻』(思い込みの激しさ、照れ隠し。)
孫は、外出から帰ると必ず手を洗う習慣を身に付けています。これは幼稚園で毎日行われる手洗いの習慣付け(訓練)の賜物です。自宅へ帰っても、坂部環境技術事務所へ来ても、私の西尾の家に来ても必ず手を洗います。しかも、石鹸で洗うのです。
ある日、家族全員で坂部環境技術事務所へ来ました。息子夫婦は2人で事務所のパソコンのちょっとした修繕を行うことになりました。その間、私は孫のお守りをすることになったのです。
事務所の前では様々な野菜が育っていて、孫には絶好の遊び場です。孫は、私の家庭菜園を手伝うといって野菜の葉を千切り、まだ大きくなってないピーマンを収穫してしまい、そして、最後に土を触り始めました。ダンゴ虫を集め、コオロギを捕まえるのです。その結果、手は土で汚れ、石鹸で手を洗うことになりましたが、孫はダンゴ虫に夢中で手を洗うどころではない様子です。
事務所の手洗いには、孫用のためにと『コアラの形をした固型石鹸』が洗面台の右隅に置いてあります。いつまで経っても、手を洗いに来ないので、ついに、私はじじぃの威厳を持って叫んでしまいました。
私:「早く、パンダの石鹸で手を洗いなさい。それでないと家に入れないよ。」
孫が、その叫びに、へぇ~、と顔だけで振り返り、のっそりと立ち上がりました。反応が遅いなぁ~。早く来ないかとやや、イライラ気味の私に向かって、私をなだめるような優しい声でいうのです。
孫:「じじぃ。パンダじゃないよ、コアラだよ。」
3歳の孫に間違いを指摘され、それも、なだめるような、さとすような優しい声で言うのでした。
私はその状況に大いにあわてるじじぃでした。『珍獣、イコール、パンダ』という脳細胞の神経伝達系が単純系として確立されていて、融通が利かない『認知症直前』症状に、がっくり。3歳になったばかりの孫からの強烈な、そして優しいイントネーションで指摘を受け、全く照れ隠しで赤面するばかりでした。
写真―2 トレイにのった『コアラの形をした固型石鹸』
(かなり使いこなし、顔が消えている)